まるめないでくれ


さあフライパンを熱くして
サラダ油はたっぷりと
うそ八百できたえた
おまえの舌ではないか
根こそぎ抜いて
じっくり妙めるがいい
スナック鉄槌のおやじも検察官も
いないといって
手を抜くな
真っ赤なうそをそらせぬように
フライ返しでおさえておけ
かつてわれらの心臓をえぐった
かの国の門番みたいに
入れまいとするいかめしいそぶりと
出ていくものへの愛想わらいを
くりかえし ほらまたそこで
ひっくりかえすのだ
おれをまるめこんでも
舌はまるめないでくれ
そうそううそ八百のコクのある味を
じょうずに引き出してくれ
黒豆なんか
つんてんしゃん
栗きんとんなんか
どんどこしょ
おまえ自身の舌であればこそ
心をこめて妙め
皿にのるよろこびを
噛みしめよ
おまえの肚に渦巻くよろこびが
おれを犯罪人に仕立てる力となるのだから
色もほどよく、香りもよし
だからおい最後に一つ
ぴかりと光るうそをつけ