雪おくり



見送られて
雨となった
見送るひとの無口が
季節はずれにひらきかけた
雨がみぞれを生み
みぞれがあらくれの
雪をそだてた
川岸のもやい舟も
雪を太くかぶって
ゆるい流れの島となった
むこう岸へこいでくれないか
亡霊のような船頭へ
最後のたのみごとをした
墨絵の墨もかすれるへさきに
琥珀の水鳥が凍っていた
見送られて
島は火となり
見送るひとの手ゆびも
風をさそった
いそぎ
桜のにおいをさせていた
燃えがらの
足跡もつけず
むこう岸のひとと
また別れ
見送られて
ひとり
生きる身となった
背を
羽のようなもので
やさしくはたかれながら