やくざが風切る界隈の 通りを若僧 引かれ者 がんじがらめの捕り縄が さぞや無念の馬の上 今がこの世の見納めか 鈴ヶ森から さそい風 袖口 風にふくらませ なにげなさそに 岡っ引き 境の橋行くあきんどを 呼びとめ 小突いて さぐり顔 あぶねえ野郎はてめえだろ 尺五の十手がでかすぎら たまには艶めく話でも よかろうと気張って奢り酒 聴けば女は もと賊徒 「ねずみ小町」ときやがった 月が照らした脛の傷 あすは多摩川 越えるとか