羽より軽い埋葬を
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 羽より軽い埋葬を



 それは、ぼくの夢のなかで育てあげられた土を、夢から醒めた朝、
ぼくの冬枯れの手が練り、築いた堤防である。
 堤防のむこうでは、だれかが、かさこそと包装紙のしわをのばし
ている。まだ見られたことのない夢が、しわのひとつひとつに自ら
をとどめてかこうと、あのしなやかな掌に抗っている。
 ぼくの夢のなかで土を育ててきたのは、土に還るべき死者や、そ
のほかの腐放物などではなく、殺意に満ちみちた男たち、数多のア
ルビノの群れたちだ。憎悪と執念に燃えさかる潜伏、冷酷一徹の泳
法が、夢から夢へと装置されたベルト・コンベアの上で、フラスコ
の中で、加熱と冷却をくりかえし、弾力性に富んだ、そしてきわめ
て緩慢に揮発する土を産んだのだ。
 堤防の上には、堤防そのものよりも重圧的な水蒸気がたちこめて
いる。かれらは自分が何者であるかすっかり忘れはてて、立ちつく
している。堤防のむこうが見えないのは、そのためだ。
 ぼくの夢のなかで育った土には埋葬の重さがない。殺人者ヤアル
ビノの群れは、すでにぼくに見られてしまった夢の囚人として、永
遠に生きるしかない。