少女たちのバス停


ウグイスカグラの実が熟す五月
バス停に少女がひとり
所在なげに佇んでいる
毛がふさふさしているけれど
ネコではなくて
女のコさ
目を見たのかい
でも しっぽをさがしたりするのは危険

やがて 少女はふたり
ひとりがふわりとしゃがみ 一瞬だが
そこから吹いてくる風に世界がひやりとする
ペンキがはがれ
ポールの停留所名も読みとりにくく
たいていはなまえなんかどうでもよくて
ポールの先の円盤ものんきに空とつながっている

ウグイスカグラの実は少女たちがつまむ
じゅうぶんに熟すのを見はからって
かのじょたちの小指の先ほどもない赤い実
野鳥の影が町から消えてひさしい
かわって少女たちがわっとふえて
かつての小鳥のようにさえずり
ポールのうえの円盤はますますのびやかに

パトカーが二台やってきて解散を命じる
いつのまにか夜がふけて
(かのじょたちにとってあれもこれも
 いつのまにか なんだけど)
少女たちがバス停から消えるのは
町の男たちにとってさびしい
さびれた町にとってさびしい 警官だってさびしい
しかし朝が来るまでのこの時間帯は
さびしくていいのだ

まぼろしとなった少女たちは
これまでいちども
バスの乗客だったことがない
バスが来なくてもこまらない少女たちの真ん中に
ポールが気まずそうに立っている
バス停のひそひそ話に反応して
ウグイスカグラの実が季節を先どり
ホタルのように光り おそらく夜通し

朝になれば
まぼろしがまぼろしでなく
バス停に毛のふさふさした少女がひとり
てのひらの肉球を
歩道の石にそっと押しあてて