発 芽


青い壁をうがつ窓がゆれている
風もなく 波もおだやか
窓がゆれているのだから
壁もゆれているのだろう
風もなく 壁もおだやか
あたたまってきているのだ
見えないものが ふくらんで
押しあいへしあいしている
地べたのぼくらもゆれ
窓といっしょになやましくゆれて
いまにも中がのぞけそう
だれかしらおもわず背伸びする
そのたびに地面がぴりっと裂けるのだ
裂けたところを埋めようとして
じぶんの手足をあてがう
ああみんな、なんてかっこうをしているの
じぶんのことはたなにあげて
だれかがつぶやくけれど
窓があるかどうかは
知らないふりをしている
あの窓がわくごとはずれたりしたら
どうしよう 心配なのは
だれしも窓の中のことなんかではなく
真っ先にのぞこうとしているじぶんが
目立ちすぎやしないか
そうなったら ひっこみがつかない
手足をつっぱったまま
しばらく はずかしくて
顔をあげられないでいるだろう

窓の中のあのひとがやってきて
やっと芽を出したわね、という
手足をつっぱたやつらが出そろう
あとからきたやつが
さきに顔をあげていたり
なんやかやとあくせくしていたのに
何食わぬ顔と ほこらしげな顔と
恥知らずな結末
それがぼくらの春の始まり