夕ぐれは 充血した雲が
あわただしく取り込まれた洗濯物のように
無造作に重ねられ 横たわる
清潔だけれど
ふたたび立ち上がれぬほど
よれよれになって

骨のない時間が
のっぺりとした顔つきで
骨のない梯子を伝って降りてくる
水なら軟水といってもいいが
やわらかい時間 などではない
死臭もして
あぶなっかしいなあ
足を踏みはずしたら地獄だな
しかし とっかかりのない顔のまま
地上へ降り立つと
道なりにまがって 全身
もやのようなものになった

骨がないまま夜へ呑まれ
とおりがかって覗きこんだやつは
なにさまのつもりか
めざめるな などと
もやのようなものへ向けて怒鳴っている
眼はビーズでいろ
めざめてもろくなことはないぞ

それから骨のない梯子をたぐりよせて
男はぶきっちょななりで
夜の洗濯物をたたみに
星の空へ昇っていく 
おれはめざめるぞ などとつぶやきながら
どこもかしこもすっかり腐ったような
へんな時間だ