からまれて


                                              やまぶどうのつるがからまって
                                              身うごきならない
                                              つめを立てたり
                                              ツノを出したりするが
                                              らちがあかない
                                              すっかりみくびられ
                                              黒いのや白いのが
                                              平気な顔してまたぐらを
                                              くぐっていく
                                              ときには魚くさいのや
                                              冷たいものをかついだやつが
                                              とおりすぎる
                                              きもちわるくてしかたがない
                                              へどが出そうで
                                              目もかすむ
                                              ろくに実もつけぬくせに
                                              腕っぷしは並はずれて
                                              ぐいぐいしめつけてくる
                                              うらみを買うはずもなし
                                              むらさきにむくんで
                                              死にたかない
                                              むらさきずんどうのあけびじゃ
                                              なおさらまっぴらだ
                                              いのち永らえてナツアカネの
                                              からだはいよいよ赤く
                                              ひたいにとまって尻尾を立てる
                                              そんなところで祈るのはやめてくれ
                                              かまわずのんきに猟銃をぶっ放すやつもいる
                                              むこうの葦原から
                                              きじがばたばた飛び立つ
                                              ギェッ、とぶきみな声をのこして
                                              いや はなしがちがう
                                              いまふるえたのはおれの のど
                                              冷たいものが
                                              こめかみをつらぬいて
                                              あたまは一気に
                                              夏のさかりへ逆もどり
                                              なにがどうした
                                              やまぶどうのつるも
                                              ちからがぬけて
                                              はなしがちがう
                                              森へどさりとおちてきた
                                              まっかな夕焼け
                                              のようなもの