水のふたり



津波に追われて
川をさかのぼってきた
悲しみのようなものかもしれない

泉から湧き出て
草木をくぐり 岩をころげた
喜びのようなものかもしれない

かれらは出会い
すでに死者に似ているが
記憶は生きて
ときに氷結し
ときに沸騰する
夜はたがいの眼に
魚を見る

ふたりもやがて
さいごの一滴になる
その瞬間の輝きをたしかめたくて
いま 熱く抱擁する