輪廻の輪を藉りて あのひとを少しずつもちあげていく

輪廻の輪を藉りて

遅れてきたひとが
見せたことのないせわしさで
ああ、あんなにいそいでわたしに逢いに
とおもうまもなく
さくらの下をくぐりぬけ
この坂に
くだりがないあかし
ひきかえしてはこない

根を鉛の沼におろして
ちりいそぐ
さくらに埋まった坂道を
白いはんにゃの形相で
つまさき立ち

坂にひとなく
うろこ状の毒性だけが這うらしく
輪廻の輪を藉りて
あのひとを少しずつもちあげていく
季節はずれの霜ばしらが
植物群を浮かすように 少しずつ
あらたな坂のふもとへ

おはいり
わたしのからだへ
それからまたのぼり坂