水 神                                 

 



トンボのくびを
とんとたたいて
あいにび色の雨がおちてきた
それだけのことで
いちにちが終わった
夏の日があって
ちいさいひとたちが
右往左往している
せんたくものをとりこみなさい
つけもの石をそこらにころがしておくな
それよりおまえたち
けっしてころぶな
けがをするな
よのなかはすっかり
あいにびいろに暮れて
雨にうたれた場所では
トンボのあたまが
ちいさいひとたちの
ざわざわしたすがたを
うつしている
ほら おとうさんのくつしたを
わすれてる
パンツもだ
あとまわしにするくせが
こんなところでいつまでも
はばをきかしているなんて と
おとうさんは
いきおいをつけて新聞をたたみだす
かわりに娘たちをしかるみたいに
冷蔵庫がまたひくくうなりだす
うちで動じないやつといったら
こいつだけだな
ドアをあけ
かすれていく あのトンボの目になって
缶ビールをとりだす
それからけっして 雨は見ず
ゆっくり時間をかけて
水の神へと化していく

 

 

 


2011/8/5