闇だけは、いつでも新鮮。

竹 焼




地中に竹の卵塊あり
竹それぞれ卵つき破って
黒々とサナギを立てる
かつて欲かいたやつらが踏み込んで
サナギ根こそぎかっさらっていったものだが
放射能汚染におびえていまはそれもなく
竹孵り 節目を亀頭のように重ね
脱皮殻の合掌そぎ落とす
いっそうたおやかに
さらにめざましい速さで成長し
陽に透けてうす水色の肺脈打ち
肺のうえにさらに肺そよぐ

  *

農業集落のかくもなつかしい毒気 あるいは花鳥風月が
地上一・五メートルをただよう午後
かつてのコソ泥たちうらみつらみの鉄の手ふりまわし
火を飛ばし 熱せられた肺が破れられていく
竹みずからも猟銃そっくりの音たててみずからを撃ちぬく

竹焼くやつらの心臓はぎらつく陽と うずまく火にあぶられ
やがて意味なく皿に盛られるだろう
森のふところ深くたくわえられた新鮮な闇を添えて