とびばこ


ついにきみにも
背後の人にわかれを告げるときがくる
いつにもまして すはだに木綿がなじみ
汗がひときわにおう
こちらの世界ではすでに木綿がたたかっている
きみはぎこちなくからだをかがめ
むねをつきだす
あちらの世界へ心臓をささげるのだ
だってこれは処刑のようなものだもの
と きみはじぶんにいいわけをする
それから ちからまかせの孤独を
背後の人にぶつけて走りだす
結び目のままだ ときみはおもう
矢のように走っているのではない
ただころがっているだけのような気がする いつもだ
それから きょうはすこしちがった
すはだもちぎれる
残酷なこどもになった
目の前にせまったのはなんと じぶんの
死体のようなもの
そして ひらべったいそいつをどんと踏みつけた
とんだ
いま なんのたすけもかりずに宙に浮き
じぶんのにおいをかぐ
汗ではない
あ、ゴムのカエル
おばかさんの弟がだいじにしているゴムのカエル
あれににているけれど
お尻にホースなんかついていないし
もちろんレモンのかたちのポンプもない
 


でも どうしてわたしがカエルなの
そのまま飛行している
飛行しているのか
からだがまのびしているだけなのか
きみ自身にはわからない
いのちなんていう
見えもしないのにやっかいで重いものを
だれかがはずしてくれたんだわ
かるいとおもっているのに どすんと
この世のものでない はずかしい音をたて
きみの体重がきみにおそいかかる
きみは全身が足のおやゆびくらいにまで
ちぢまるのを感じる
きみは少なくとも
二人分の体重を受け入れなければならない
たまらずいのちがひざのあたりからめりこんでくる
折りたたみいすを広げるみたいに
骨組みが間合いをとり
筋肉がととのえられる
まるで空中のいすからすべりおりた人か
背筋を伸ばして立っている
こんなポーズをとるつもりはさらさらなかったのに
いまうしろには
かつて超えたことのない四角いかたまりが
四角いままであるだろう
だがそのまたうしろの世界のどよめきには
ブーケが添えられている
きみは自信にあふれた真っ赤な顔を
そちらに向けようかどうか迷っている