とびばこ


  

ついにきみにも
背後の人にわかれを告げるときがくる
いつにもまして すはだに木綿がなじみ
汗がひときわにおう
こちらの世界ではすでに木綿がたたかっている
きみはぎこちなくからだをかがめ
むねをつきだす
あちらの世界へ心臓をささげるのだ
だってこれは処刑のようなものだもの
と きみはじぶんにいいわけをする
それから ちからまかせの孤独を
背後の人にぶつけて走りだす
結び目のままだ ときみはおもう
矢のように走っているのではない
ただころがっているだけのような気がする いつもだ
それから きょうはすこしちがった
すはだもちぎれる
残酷なこどもになった
目の前にせまったのはなんと じぶんの
死体のようなもの
そして ひらべったいそいつをどんと踏みつけた
とんだ
いま なんのたすけもかりずに宙に浮き
じぶんのにおいをかぐ
汗ではない
あ、ゴムのカエル
おばかさんの弟がだいじにしているゴムのカエル
あれににているけれど
お尻にホースなんかついていないし
もちろんレモンのかたちのポンプもない
でも どうしてわたしがカエルなの
そのまま飛行している
飛行しているのか
からだがまのびしているだけなのか