トラクターを運転しているスタインベックとか
だいぶ冬らしくなった時期に、バラが大小二つのつぼみをつけた。
四季咲きということだが、冬はなかなか花ひらくことはない。
小さいほうは硬そうなつぼみである。
大きいほうは、花びらがひらきかけている。しかしひらきかけたまま幾日もたち、寒さで、
「咲くのをやめにしました」
という格好になっている。
このままほうっておけば、ただの大きなつぼみのまま、内側から腐っていくだけだろう。
それではもったいない。
一輪挿しに活けることにした。
日あたりのいい出窓においた。
午前にそうしたのだが、午後になると花びらが大きくゆるみ始めた。
「ちょっとテンポが速すぎやしないか」
とおもった。
これでは、日持ちもなにもなく、あっというまに散ってしまうかもしれない。
だが、つぼみのままの姿を寒気にさらして、こちらのからだまで固まってしまうようなながめのバラよりは、ひとときでも華やかに、そして大輪らしく豪華に花ひらくのを見たほうがいいにきまっている。
出窓に置いたのを移動させたりせず、一気に花ひらいて散るまでの時間をすごすことにした。
手狭で、飾り気のない部屋には、バラ一輪でけっこう贅沢な装飾となる。
べつの部屋から移ってこちらの部屋へはいると、かすかにだが、甘い香りもいきわたっているのがわかる。
きょう晦日、あすの大晦日と、ことしをしめくくるには恰好の手慰みだ。
さて、もう一輪をどうするか。
あちらもついでに活けるとするか。
いちにち遅れて、つまり大晦日だが、一輪を花瓶に加えた。
こちらもテンポが速かった。
といっても、花ひらく方向へむかってではない。
つぎの日(元日)に指ではさんで押してみると、奥のほうがスカスカになってきているのがわかる。花びらはかたくなに閉じたままだ。
あのままほうっておいても結果はたいしてちがわなかったろう。はさみを入れるタイミングを誤ったのだろうとあきらめるほかない。
花ひらいたものと、つぼみのままのものが先をきそってポロポロ散るのだろうか。
出窓のけしきが無残にならないように、ころあいを見て捨てることにする。
2009.1.3