先人はわたしたちにずいぶんヘンテコリンななまえを残してくれた。
ゴミグモもそうだが、植物にも多い。
ヘクソカズラ、オオイヌノフグリなどなど。ハキダメソウというのもある。
クサギなど音(オン)だけでは気がつきにくいのもあるけれど、まだしもだ。これは臭木だそうだ。
ゴミグモもおもしろくない。ニンゲンにはゴミ屋敷などと称せられるところにすんでいるひともいるけれど、一種の病気とかんがえられる場合もあるようだ。かたづけられない症候群。捨てられない症候群…。
しかしゴミグモがこまめに巣を張り替えたり、ゴミといわれるものが雨にぬれれば水分を抜きとる作業にいそしむなどは、いかにも前向きで、かれらの勤勉さを知っていればゴミ呼ばわりはしなかったのではないか。まあ、ゴミグモのほうではいっさい目立たぬ気構えでいるらしいから、そんなことをいってもしかたがない。いまだって、ゴミグモは知っていても、持ち分のゴミの水分を抜きとるなんて話はあまり知られていないのではないかとおもう。
ゴミグモはたいてい巣の中央にいて、頭胸部を4本の脚でかくしてじっとしている。そうして獲物が巣にかかるのを待っている。
そのすがたをボクサーになぞらえたい。ガードの堅い、防御のポーズだ。
もちろん、ここぞというときには相手を手玉にとる。そう、ボールを二本の前脚で回転させる、テクニックとスピードも兼ね備えている。
ボクサーという種類の犬もいるが、まぎらわしいこともないだろう。クモのほうはボクサーグモとしてもいい。
ただ、クモの仲間で顔をかくすのはゴミグモにかぎらないから、排水作業の特徴をとらえるなどして別のよび方のほうがいいかもしれない。にわかには思いつかない。名づけるつもりが、あいまいになってきた。このへんが猿のセンスだな。
ついでにいうと、ヘンテコリンなネーミングはなにも先人にかぎらない。
市町村の統合でたくさんのばかばかしい地名が誕生した。
ゆかりある地名がいともたやすく切り捨てられ、歴史の尊厳も土地柄への敬意もない。
新市名のあるものは、命名の能力が幼稚園児ていど、つまり猿よりはちょっとましなていどのセンスで名づけられている。
2008.7.29