アメリカンでドジョウすくい

 アメリカンでドジョウすくい


 釣り用のクーラーボックスと玉網を持って、メダカをすくいにいった。
 一センチとか一・五センチのメダカをみつけて四日後、こんどは二セン
チばかりのドジョウをつかまえた。
 田んぼの用水路は、稲穂が吐き出したこまかい円形の葉のようなもので
覆われていた。水面に分厚く積もっている状態で、メダカどころか、流れ
も見えないところがある。このまえメダカをすくった場所もそうで、田ん
ぼからと一段高い用水路からと、流れ込むふたつの部分だけ水が見えて、
あとはみどりのふたをされている。
 そこへ網を突っ込んで水中をまさぐり、網が壊れるかとおもうほど重た
くなった網を引きあげた。みどりの塊ばかりで、生きもののけはいすらな
かったが、網をふるって塊をあぜに放り出すと、かすかな動きが見てとれ、
目を凝らせば、半透明の茶いろい糸状のものがうごめいている。それが二
センチばかりのドジョウだった。みどりの塊といっしょに掬いあげられて、
むこうはびっくりしたろうが、こっちもやややと声が出そうになった。
 
 からだにわずかに黒い斑点があり、口先にはきちんとひげもそろってい
っぱしにドジョウのなりをしている。小さいメダカは親のメダカにくらべ
てからだが白っぽく、ヒメダカにちかいけれど、ドジョウもまた親よりは
淡い色をしている。いずれもこれから生きるための泥をのんでおとなにな
っていくということだろう。
 その日の収穫は、このドジョウいっぴき。
 あぜ道を歩きまわり、メダカの群れをみつけたが、葦の生い茂るなかだ
ったり、網を入れてもとうていつかまえられそうもない小さな集団だった
りして、メダカはあきらめ、ドジョウをいっぴき入れたクーラーをバイク
の荷台に積んで帰ってきた。

 メダカといっしょにしては、エサを食いはぐれたりしないだろうか。
 ドジョウをいきなりメダカの水槽に入れるのはやめる、しばらく発泡ス
チロールの箱に一匹だけでいてもらい、そこで少し大きくなってもらう。
それからメダカといっしょにする。玄関の水槽のほうは、からだも大きく
敏捷なオオタナゴが3匹、それに大きくなりすぎたくらいのモロコが数匹と、
2センチのドジョウが命を永らえられる環境ではない。

 玄関の水槽は、そろそろ砂利を洗う時期にきていた。それで、なかの魚
の一時の引っ越し先として、あらかじめ発泡スチロールの箱に水を汲み置
きしておいた。雨降りが続き、井戸水と雨水のブレンドでややにごってい
る。スモモの葉が1枚、落ちて沈んでいる。底にはわずかに庭の土が雨で跳
ね上がったのがうっすらとひろがっているだけだから、とりあえずは木の
葉がドジョウの隠れ家になるだろう。殺風景きわまりないが、一時しのぎ
の場所としてドジョウにとってそれほどわるくはないはずだ。
 そして、〈メダカのえさ〉という名のメダカのエサをドジョウにやるこ
とにする。

2006.8.14