芝居がえり
芝居がはねて 山谷堀
思いがけない底冷えは
小雪がちらちら 春の空
小屋ののぼりの芝居文字
ながめて吉三の名ぜりふ
まねてつぶやきゃ うぬぼれ 酔狂
帰りは駕籠より 舟にしよ
真っ赤なけだし 色っぽく
いやさ、そこ行く姐さんよ
おぬしも芝居の見物か
幕の名残をひきずって
おぐしに載せた手ぬぐいの
端をくわえているさまなんぞ
女形も顔負け 世辞抜きで
粋とはみえて 春の雪
船頭 すまぬが 深川の
屋敷へ身どもを乗せてくれ
連れの姐御は途中まで
付録で華と洒落込んだ
無理と風情を 勘定に入れて
酒代 はずむぜ 春だもの