夏の魚信 くもがたよ 夏の 魚信はあるか 熱いあたりがおまえに 見えているか 糸はこの世に たしかに織られているが あそびごころのむすぼれを ジャコウアゲハが毒をふくんで くぐる かがる あの鯨幕の ほねのあるチョウチョウさ おれはこの世に居残り おまえが遺した半世紀ぶりの 蚊帳をふくらませ やせた頭をつっこんで 息絶える夢をみる 夢は けもの顔 首をくわえたまま 愛撫やら 甘噛みが ときに 鉄さびのにおいをたらたら 蚊帳もあおじろく 染まっていく 羽化のごとく 蚊帳をぬけだせる 日はあるか くもがたよ 魚信はあるか