唄う鉄分 もとより声は大地のものであり 足うらでひろいあつめるのである 体重をつまさきにかけて 声をひろい、かつ 鉄分をとる 大地からと、あのひとたちの期待からと つちふまずがさいしょの共鳴をはらむ つぎにふくらはぎがはりつめ ひざの皿もひびきはじめる 声がきみをとらえ きみの声となり 声としての肉体をあらわにする さて、そのくちびるでおもむろに語りはじめるがいい うたうのはひとこと、ふたことでよろしい それでも聴衆の耳はうたであふれかえる すべての耳が溶鉱炉になる 喝采がきみのステージを さらに頭上たかく築く 大地に返すべき熱いものによろめきながら きみはさいしょの足うらいちまいになりきるために だれにもさとられぬよう つかのま ひとり深い呼吸に埋没する