■五右衛門・吉三


もしやそなたは 石川の
五右衛門どのか
娑婆と地獄は地続きなれど
七条河原で釜炒りされて
なにゆえ信濃路くんだりで
六法踏んでる うつけ者
伊那の谷川 見くびって
落ちりゃまたぞろ地獄だよ


こいつぁ奇遇だ 同業の
弁天小僧
男吉三で居りゃいいものを
赤いべべ着て 流し目 浮世
茶の道知らずの はすっぱが
品をつくるも 菊之助
すね毛晒して お嬢とぁ
聞いてあきれらぁ 笑わせら


相も変わらず ごてごてと
むさくるしいな
重ね草鞋に ビロード褞袍
頭ぼうぼう 百日かずら
朱鞘の大小 泣いてるぜ
キセル雁首 櫛にして
長い月代 撫であげる
芝居がかって しゃらくせえ


ここで会うたが 百年目
聞かせてやろか
閻魔の使いで 善光寺さまへ
伊賀流忍びで奥殿深く
血脈 ご印を盗みだす
旅は道連れ 浴びるなら
地獄風呂より 娑婆の風
五右衛門・吉三で 参ろうか