■邊暮之介 花篇







はずかしながら たとえれば
野に咲く目立たぬ 花がいい
ひととき開いて
ひっそりしぼむ 花がいい
 やわな野郎で 目障りな
 鴉蜻蛉でござんすが
 てまえ流浪(ながれ)の邊暮之介


花なら ほんの小粒でも
咲けば目につく チョウもくる
つかのま夢見る
姿にほれる 女(ひと)もある
 生まれ在所はあばれ川
 利根川 佐原の花あやめ
 おんな苦手な邊暮之介


隠れてひとり咲く花の
踏まれてつぶれて 枯れるとも
雨風いとしみ
土へと還る 律義さよ
 闇に乗じて 消えていく
 臆病者とは大違い
 詫びて 草鞋の邊暮之介 


 拙者 刀は飾りもの
 仇討ち 助太刀 頼むなら
 ほかをあたって むむ…暮之介