■斬らぬ








おっとっと 不可解 おぬしから
呼びとめといて だんまりきめるとぁ
手前のどこが 気に入らぬやら
口ひん曲げて 言うてみよ
ほれこのとおり
聞く耳ふたつ 取り揃えて ござんすよ


おっとっと 待ちねえ 柄に手を
かけちゃあともども あとには引けぬ
妻子はおるか 手前は独り
覚悟があれば 抜きなされ
日があるうちに
始末をつけて 弔いの 酒酌もうか


おっとっと こいつあ まいったな
お相手するにも 勝手がちがう
おぬしの腕じゃ ひと様切れぬ
刀を鞘に もどされよ
なさけはかけぬ
手前が先に 背を向けて 立ち去ろか