雨がそぼふる 布佐港
馬が荷を待つ 濡れるまま
おれは雨戸を立てなおし
灯のない行燈 腕枕
逃げてく先などありはせぬ
ひとり小舟を漕ぎ出せば
利根が三途の川となる
雨は馬の背 荷を濡らす
出を待つ鬣 凛として
馬方しずかに 手綱とる
生業 命と 十重二十重
八里の旅行き 鮮魚街道
道にこぼれたイワシなど
拾う暮らしが身になじむ
雨にふくらむ 藁の屋根
土間をネズミが 往き来する
わが身の闇を数えつつ
雲間に日差しの夢あれば
わずかに覚悟がもてそうな
傘を持たずに 柳まで
嚏ひとつで引き返す