はぐれ流氷



北の岬に 憧れて
海を求めて来たものを
この世隔てるケアラシに
ひとり旅人 立ちつくす 


寄せる波さえ凍てついて
イワシころがる砂浜辺
船は舳先を寄せ合って
さびれ港に影細る


はぐれ流氷 だれの夢
春に消えると知りながら
ユキホオジロがころげ飛ぶ
旅の果てには なに残る


息であたため つつむような
北のことばのやさしさよ
命つなげる 町の灯が
ともる夕べに 涙する


もしや暮らしていけるかと
さすらい者の気まぐれよ
オジロワシさえ逃げ惑う
あすも大しけ 北の町