火の手 動物園のオリのなかで あるいは荒野で 背からずぶずぶ沈んでしまいそうな へんに弾力性のある夜の岩にしゃがみ おれこそ未来に生きのびる たった一頭の気がして はるかに火をつけ つけられるやつ 人類のおもいでよりも 高く 清潔な火の手をあげて帰ってくるやつ その火をかぞえ おれの目は うるんだ砦 砦を越えておれを抱きしめた火よ それきり夜の岩をはなれなかったのは 火を交わらせぬため 火と火のあいだの闇を行く 最後のたましいのため 岩があり ふたしかな 岩のうえにかろうじておれがいて おれはまたもゆすぶられる 荒野で オリのなかの蒸れた片隅で つめたい手によって