孔雀のはねを抜く

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 孔雀のはねを抜く


人気のたえた動物園のオリのなかで
孔雀がはねをひろげていた
そのはねの一本を
彼女は金網ごしに綱ひきでもするように
ついにひきぬいてきた

彼女はすっかり孔雀のつもり
叱ることもできず
はね一本の壮挙と化身を
家族はこっそり祝したものだ

エメラルドの
ゆびをまるめたくらいの水玉もようが
はねのさきにひとつ
それさえなければ(とは もはや
だれものぞみはせぬが)
背にこそばゆい
ススキまがいのしろものだ
しかし がんじょうな根もとは
なまのままの
孔雀のしろいほね

うしろ手にかざし
スカートのすそをつまんで身をひねり
ふみだした足はしようもない
ひとのもの

「さあ だれか
さいごのはねをぬいて!
金網がここにあるとしてよ」