孔雀のはねを抜く 人気のたえた動物園のオリのなかで 孔雀がはねをひろげていた そのはねの一本を 彼女は金網ごしに綱ひきでもするように ついにひきぬいてきた 彼女はすっかり孔雀のつもり 叱ることもできず はね一本の壮挙と化身を 家族はこっそり祝したものだ エメラルドの ゆびをまるめたくらいの水玉もようが はねのさきにひとつ それさえなければ(とは もはや だれものぞみはせぬが) 背にこそばゆい ススキまがいのしろものだ しかし がんじょうな根もとは なまのままの 孔雀のしろいほね うしろ手にかざし スカートのすそをつまんで身をひねり ふみだした足はしようもない ひとのもの 「さあ だれか さいごのはねをぬいて! 金網がここにあるとしてよ」