栓 きちんと栓をされて ぼくはねむった けれどもそっとしてはおけず さらにふかい眠りへ しずむ栓のように ぼくの寸法は自在だった 闇はあふれたくらさを恥じたか 敷居をまたぎ とりかえしのつかない夜となった ぼくはあかるく からっぽだった それから雨戸が鳴りだした 掻痒のような雨風が ぼくをうまいぐあいに満たした ひきかえして来はしないかと 鍵穴から壁の画鋲へ ともす釈明はないものかと ながいながい溜飲のはての いじけた栓のような だれにも解せぬ時刻だった てのひらでもまにあわぬ しずかな朝だった あいつが打ちあげる花火のおとを ぼくはぼんやり聴いていた