槍 男がひとり 満月をみている 影が男だ 男が影だ そんな夕べ 椰子がかたむき 男がたおれ 槍ばかりつっ立ち 満月をみている そんな夕べ ゆうだちが夕焼けを始末し 始末されない男はぬれ 雨おとがしろい蛇のように這いまわる ジャングルに夜がくる 槍のさきは 男の脾腹で ねむたげな人形だったか 槍のさきは雲を裂き すこし傷つけて 月をよんだか それから槍はいっぴき 月のとおる道を先廻りする