鳥 獣 葬
魚であり鳥でもあるような生きものは
まだいなかった
飛べるものの集落と
泳げるものの集落と
境界は模糊として しかし
長い海岸沿いに共存しているふうだった
(岸辺は絶えず移動した)
巨大なサナギがころがるように
あたたまりふくらんだ大気が
地表をゆっくり移動した
(速度を測る時間さえあいまい)
ひとつらなりの山なみが
身じろぎ
やがてからだが割れ
夕焼けの羽をひろげた
日中の青のままで
(山が山を産んだだけのことだった)
あいまいな時のまま日を連らね
やがて ミルク以前の白い生きもの
鳥のようなものと
魚のようなものと つるんで
溶け合うことなく からんだまま
生命以前のみどりをにじませた
*
青いままの夕焼けの
海岸線と水平線がまじわるあたり
鳥獣葬の窓がひらいて
二十一世紀のひとたちの骨は
ほとんどさざ波 骨が骨を砕いて
粉となって日中の青を発光していた
(未熟な欲望しか残っていなかった)