楓 Fuh
楓の葉 いちまいの
火を
消しとめられぬ
みずからが持つ
風であおぎ
さらに燃え立つ火を だれも
消しとめられぬ
うら返っては燃え
おもてをみせてはゆらぎ
いちまいから
億枚へと 燃えて
ひとり
秋を襲名するかのごとく
呆然と立ちつくすひとまでも
赤くそめあげ
たとえ Who…とたずねるものが
いたとしても
楓と名のらず
木といわず
ましてや ひとと騙らず
立ちつくしたまま
これよりほかに
抗議の仕方がないというふうに
ぼうぼうと燃え
ひそかにオニユズの
きいろい実に
火を移し
冬日のひとの
燃える影をながくする