きみがいちばん 単車は二番 ウォシュレットは三番目

おれと単車とウォシュレット

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おれと単車とウォシュレット

離れの小部屋の屋根瓦を
大粒などんぐりが
コントンクリントンカフカフと鳴らす季節がきたもんだ
おれは革ジャンを羽織り
ほんのお飾りの絹のマフラーを首に巻いて
ナナハンにまたがる
おれのきれいな尻は
ゆったりとしたシートにしっくりなじむ
そうさ おれの人生でいちばんでえじなのは
ナナハン
つぎが ウォシュレット

愛すべきナナハン
愛さずにはいられないウォシュレット
いちばんでえじ 二番目にでえじ とはいうけれど
その差は微妙で
おれはときどき いやしょっちゅう
自分がナナハンにまたがっているのか
ウォシュレットにまたがっているのかわからなくなる
でもどっちだっておなじこと
水しぶきをはじきながら時速100キロ
ウォシュレットが高速道路を驀進中
ウォシュレットが高速道路を驀進中
秋の風も氷のようだぜ
ヘルメットのなかはおれの熱い息と冷たい風のせめぎあい
(こんなときは ウォシュレットのぬるーいお水がいいよね)

そうさ おれの人生でいちばんでえじなのは
ナナハン
ふたつめはウォシュレット
もちろん たまにうしろに乗っける彼女には
「きみがいちばん 単車は二番
ウォシュレットは三番目」
昔なつかしいカステラのコマーシャルみたいにいうのさ
彼女は「あたしが一番なんだ」と信じている
信じているふりをしているのかもしれないが
それもどっちだっておなじこと
たとえふりでも 調子をあわせるってことが
ふたりにとってでえじなんだ
ヘルメットをかぶったきみはかわいい(これはほんとだ)
背中に思いきりおっぱいをくっつけているんだぞ
おれのからだがきみの命綱なんだから
遠慮はいらないぞ
てなこといって 彼女を悩ませたり楽しませたり
けっきょく ふたりいっしょにいいきもち

そうね おれがウォシュレットにまたがっているとすれば
彼女もウォシュレットにまたがっていることになるんだが
まあいいじゃないか 
ここやあそこにぬるーいお水をひっかけあおうぜ

おれと単車とウォシュレット ついでに彼女
おれの人生でいちばんでえじなのはナナハン
つぎはウォシュレット
三番目以下(つまり彼女も入るわけだが)
三番目以下は じっさいのところみんないっしょ
離れの小部屋も屋根瓦も
大粒などんぐりも
ドングリが鳴らすコントンクリントンカフカフという音も
彼女もみんなでえじ

つめたい雨の日はやむなし
ナナハンに乗ってるつもりで
ウォシュレットにまたがり続けるぞ