その日、七月の

あの年の 七月十七日を
ときに ベランダに放つ
陽に熟せられ
息を吹きかえし
産毛をぞよめかせ
かつての たったいちにちが
根となり
さまざまな思いが芽吹き
花むらとなる
つがいのキジバトが訪れ
青光りするトカゲが
遁走するベランダのデッキに
奥の方から
洗濯機のブザーが
のんきにとどく
ひとり 男物
数日ぶんの洗濯物
子は持たぬが
よごれを落とした
喃語のかたまりが やがて
いっちょうまえに助走をつけて
飛び立つ影は
ベランダに つるんとした
きれいなかかとを
のこしたままだ
ゆうがたには
七月十七日を そろっと
だいじにしまいこむ。

 2022.8.16