水色のタンクがある風景
うすい光を
やぶらないように
やぶらないように
羽音をころして 鳥が
北へわたるらしい
春を力づくでおさえこんだ
三月の冷気が
あのあたりでこねられ
熱を帯びているのかもしれない
熱を帯びて わずかにうずを巻く
うすい光は 朝にも
夜にも属し
いずれともわからぬ
光のあわいから 影がもれ
影はしだいにふえ
三角形の群れをなして
鳥になる
うすい光が層をなす
むこうの地上には鉄の階段があり
透明な小エビのようなものを
からだのまわりにまきちらしながら
かたい靴音をたてて昇るひとがいる
わたる鳥の影がなぞる 水色の
大きなタンクを 鉄の廊下がめぐり
閉じられたままの
みえない扉を そのひとは
鳥の足のように骨ばった
細い指でコツコツたたく
不安な音を聴いているのは
たぶん そのひとの
ふたつの耳だけ
そんな風景を
小さな家からながめていると
露をふくんだ草のせいで
足もとだけがかがやく街道を
ひた走るひとがあらわれる
けさは わたる鳥の
三角形の群れを帽子にして
こんな国に 未練など
あるはずがないといいたげな
たくましい脚力で。
2019 2026 改稿