2026

水色のタンクがある風景


うすい光を
やぶらないように
やぶらないように
羽音をころして 鳥が
北へわたるらしい

春を力づくでおさえこんだ
三月の冷気が
あのあたりでこねられ
熱を帯びているのかもしれない
熱を帯びて わずかにうずを巻く
うすい光は 朝にも
夜にも属し
いずれともわからぬ
光のあわいから 影がもれ
影はしだいにふえ
三角形の群れをなして
鳥になる

うすい光が層をなす
むこうの地上には鉄の階段があり
透明な小エビのようなものを
からだのまわりにまきちらしながら
かたい靴音をたてて昇るひとがいる
わたる鳥の影がなぞる 水色の
大きなタンクを 鉄の廊下がめぐり
閉じられたままの
みえない扉を そのひとは
鳥の足のように骨ばった
細い指でコツコツたたく
不安な音を聴いているのは
たぶん そのひとの
ふたつの耳だけ

そんな風景を
小さな家からながめていると
露をふくんだ草のせいで
足もとだけがかがやく街道を
ひた走るひとがあらわれる
けさは わたる鳥の
三角形の群れを帽子にして
こんな国に 未練など
あるはずがないといいたげな
たくましい脚力で。

        2019 2026 改稿