直立する黒
おれが持っている赤は 暗い 夜のなかの夜の赤だ 暗すぎて 黒にちかい ほとんど黒だ おれが持っている赤は 黒い おれが赤で夕陽をえがくと タドンみたいな夕陽になる 黒いまま燃え尽きて 黒ぐろとした雲になる おれが持っている赤は黒だ 夜のなかの夜の赤で いつまでも夜が明けない 血の気のない赤のまま 直立する黒だ ◆ そうしてかれは 立ったまま 『赤と黒』を書き終えた 羽根ペンからしたたっていたのは 直立する 黒インクだ