さみしい場所で浮いているのは
日が暮れないうちにと
せっかちにきみはトマトを蹴った
寸足らずな幕切れを
演じたのだ
トマトはころげ
あの橋を渡ってきえた
流れには飛びこまなかった
と きみはいった
トマトは浮いてしまうからね
いいながら
ベルトをゆるめ
ズボンをずりあげ
ベルトを締めた
ちっとはほぞをかみ
伸びあがった
あいつの行方を見はるかしたが
想いはよじれ
こんどはきみ自身が
ずり落ちた
それから もはや
帰ってくる気のないやつを
呼んだ 青くさい声で
うったえた
さみしい場所で浮いているのは
おれのほうだ と
のこされたトマトたちは
くちをつぐみ
しっかりつぶされて
ゆうやけになった
世界の百万分の一
ちいさなちいさなゆうやけだ
よれよれのズボンばかりが
突っ立った 橋のむこう
うす青いそらに 輪切りの
すこし緑がまじった
赤い月が浮かんだ
目にとろりとしたものをたたえ
川面に もうひとつ