2025

わらいザクロ


去りゆく夏を
ふかく呑みこんで
息をとめ
それから大口あけて
ザクロがわらった
悪魔みたいに大口あけて
ザクロがわらった
笑いのツボにはまったわけなど
知るもんか
わらいころげて
皿から落ちた
皿に添えられた笹の葉は
ウサギの耳だ
ウサギの耳を覗けば
火の海だった
皿には記憶の
業火だった
皿はあわてて
たたみにつっ伏した
わらいごえを聴きつけて
おまえはひげをそったが
顔は見せなかったな
靴を履きかけたが
ドアをあけもしなかったな
たかがザクロ というわけだ
通りがかりのだれだか
つられてわらいかけ
ようやくこらえた
わらいつかれてザクロは
気分がわるくなった
(呑んだ夏がわるかったのか)
大口あけて
ゆうやけのゲロをはいた
秋たけなわの生まれ故郷に
つぶつぶもようのゆうやけを
吐き散らした
もひとつ はいた
生まれ故郷に
つぶつぶもようの
ゆうやけふたつ
 無事でいるなら
 鼻をつまんで
 帰ってこいや