わらいザクロ
去りゆく夏を
ふかく呑みこんで
息をとめ
それから大口あけて
ザクロがわらった
こどもみたいに大口あけて
ザクロがわらった
笑いのツボにはまったわけなど
だれにもわからない
わらいころげて
皿から落ちた
皿にえがかれた
笹の葉が はずみではがれ
はがれたところが
火の海だった
皿には記憶の
業火だった
皿はあわてて
たたみにつっ伏した
わらいごえを聴きつけて
ある男はひげをそったが
顔は見せなかった
ある女は靴を履きかけただけ
たかがザクロ というわけだ
通りがかりのだれだか
つられてわらいかけ
ようやくこらえた
わらいつかれてザクロは
気分がわるくなった
(呑んだ夏がわるかったのか)
大口あけて
ゆうやけのゲロをはいた
秋たけなわの生まれ故郷に
つぶつぶもようの
ゆうやけひとつ
もひとつ はいた
生まれ故郷に
つぶつぶもようの
ゆうやけふたつ
鼻をつまんで
帰ってこいや