よごれ龍之介
さてさて どのくちさきが
にごりましたかな
どんな一滴のくちさきでしたかな
澄んでおりましたな
おぬしのことばになるまでは
ガ行もザ行も
コールタールも
澄んで ずうっと奥まで
うかがえましたな
畳屋さんの目
魚屋さんの骨
八百屋さんの鬆スまでもまでも
町を流れる
芥川
龍之介さんもむしった
岸辺のはぐるま草の花むらのなかで
おぬし
若い彼にぶっつける小石を拾いましたな
うおっほっほっほ!
すかしもようの郵便局の
窓口を流れて芥川
龍之介さんの手が切手のように
おぬしのどこに張りついて熱いのですって?
「あんたあたしを
おどしてあやつっていただけよ」
さきにいったおぬしの勝ちですぞ
きたなくたって勝ちですぞ