夕焼けまみれ

 



つぶれトマトの夕焼けで
まだしもさ
きずもの はぐれもの
トマトのままの夕焼けや
しぼられたすえの夕焼けは
まだまだ新鮮だし
たてつくやつはないからな
ぶかぶかのブーツでふみつぶして
そのまま夕焼けへまぎれこんでも
もんくをいうやつはないからな
そこでころげて
夕焼けまみれになったって
だれもこまらない
水に飛びこむなり
シャワーをあびるなりすれば
さっぱりするし ひょっとすると
手首に夕焼けのブレスレットなんかが
はめられているかもしれない
うらやましがられはしても
責められる理由はない
つぶれトマトの夕焼けで
まだしもさ
酸味もあって
青くさい夕焼けで
あすの暮らしもおおむね真っ当さ
これが硝煙くさい
夕焼けだったとしてみろ
酸味があっても ちがうだろ
ブレスレットをする腕が
なかったりしてみろ

 


腕がないだけなら
まだしもといえるか
ブーツをはく足が
なかったりしてみろ
足がないだけなら
まだしもといえるか
いまみている つぶれトマトの
夕焼けの正体が
腕のないブレスレット
足のないブーツだと
いわれてみろ
それでもおまえは
声を立てないか
もんくをいわないか
それでもおまえは
夕焼けまみれになりたいか