パトリシアがいた夏1/2 

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 パトリシアがいた夏




うすっぺらなはだかの胸に
そらがすけて見えそうな
うすっぺらなハムを二枚載せて
パトリシアは泳いでいたね
あの夏の六本木の谷の底
湧き水もある池をとりまいたぼくらは
パトリシアがバックストロークで
水をひとかきするたび
息を呑んだものさ
あのうすっぺらなハムが
ずれてしまったらどうしよう
   *
夏休みの宿題なんか
なんとかなるさ
パトラがいるかぎり
逆あがりなんかできなくたって
パトラがいれば
ぼくらはハッピー
口にはしなかったけどだれもがそう思った
   *
名前を呼ぼうとすると
それだけではらはらしちゃう
そしてかげでは
さも呼びなれているかのように装って
パトシリアが、と話し始め
パトラが、とつぶやく
   *
六本木にまだ草原があり 雑木が生え
ボール投げではしょっちゅう
やぶにボールを見失っていた時代
ぼくらのそばにパトリシアがいて
パトリシアのそばには幸せがころがっていて
ぼくらはだれでも自由にそれを拾うことができた  
   *