カエル 2/3
 次頁

りそのとおりのことをいうのだろう。
 ダルマガエルといえば、ヒキガエルの仲間で大型の部類に入る。体型がぼっ
てりとして、跳ねるのは不得意にみえる。ポシャン、というのは飛び込むので
はなく、風呂にでも入るみたいにのっそり水に浸かるようなことかもしれない。 
 音はポシャンでもポチャリでもよい。
 それでとりあえず、かの無音説がくつがえる。
 しかし、それみたことか、などといばるほどのことでもない。

 なるべく自分の目と耳で確認しておきたくて、園内の森を歩いてみた。池が
いくつかある。周りがガードされていて、水際にいける場所は限られている。
いつもなら、カワセミの姿を期待して歩くのだが、きょうはカエルのポシャン
だ。期待するとか、探索するとか、まずしい野心があっては、わびもさびもな
い。
 園の外に出た。炎天下の水田地帯だ。
 そうしてあぜ道を歩き始めたとたん、体長一センチあまりのカエルが二匹、
たんぼの中を跳ねているのに出会った。からだが半分だけ水に浸かっている。
水は五十センチくらいに伸びた苗の根もとをやっとこさ、ひたしている。カエ
ルが跳ねればとうぜん水音がする。
 用水路の水は澄みきって、ドジョウがいっぴき、底でじっとしているのがみ
える。ひとのけはいに反応してぐるりとからだをよじり、どろのけむりをあげ
る。これも水音を立てるが、古池や…の虚構として仕立てるには無理がある。
 それから数十メートル歩くうちに、なにかが飛び込む音をきく。
「ああした水音を立てて飛び込むものに、カエル以外になにがいるというのか」
 となかばいらだちながら自問してみる。
 みどりのいろもあざやかな中型のトノサマガエルが小さな流れを横切ってい
く。飛び込んだのを目撃したわけではないから、これもなかったことにしてお
こう。

 そうして、つごう三百メートルほどあぜ道を直進して、小川のほとりに出る。
ウシガエルが鳴いている。密生する葦のあいだで、二匹、声を立てている。こ
いつが水音を立てないように川の流れに身体を沈めていくさまを思い描くのは
容易である。跳ねるよりも、のそのそ歩くほうが得意のようなやつらだから。
 それから小川に沿って歩き、もうひとつ別の用水路をみていく。そして息を
呑んだ。メダカの群れだ。ややや、とおもった。こんなところに、これほどに! 
 観察園の<こぶなの流れ>と称した流れにはメダカがいる。園内は昆虫の捕
獲も植物の採集も禁止されている。ただし園の入り口の芝生の広場で昆虫用の
網を使うのは許されている。もうかぞえきれないくらい通っているが、禁止を
無視している人間をここでは目撃したことがない。かってに観察園といってい
るが、ほんとうの名称は<牛久自然観察の森>だ。

 カエルのことなどどうでもよくなった。網と入れ物を持って用水路のこの場
所へくるとしよう。そのことにたわいもなく夢中になっている。いえの水槽に
いるのは、モロコとオオタナゴだ。まえまえからメダカがほしかったのだが、
観察の森以外では、牛久沼をはじめ、小貝川、旧小貝川、利根川、乙戸川、小
野川、新利根川、大正堀、江川、破竹川……と、魚釣りができる流れは近隣に
たくさんあるのに、メダカの姿は見かけない。あるいはどこかにいるのかもし