ある朝、ネギをしょって 2/2
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 でもいまは、他人のこの庭に棒杭のごとく立っていなければならない。
 そのひとは鋏や新聞紙を持って家から庭へ出てきた。
 束ねてあるビニールヒモを鋏で切った。
「日陰に置けば持つから」
 まだ新しい新聞の日付を確認してから、三本のネギをていねいにくるみ、
いましがた切りはずしたビニールテープをかけて結わえた。
 それほどまでていねいにすることもないとおもったけれど、おかげでカメ
ラバッグのフラップに新聞でくるんだネギを噛ませて、どこも汚すことなく
担いで帰宅できたのだった。
 あくまで身がひきしまり、辛み、甘みの調和も申し分のないネギだった。
 納豆のきざみネギ、汁もの、炒めもの、と賞味した。
 焼き鳥のネギマはどうだろう。昔のような酒飲みではなくなったせいか、
酒の肴をわすれるところだった。これをためさなくてはいけない。
 さて、しばらく使っていない金串はどこだろう。


2009.6.5