無名峠で じまんじゃないが おれはしりまでかわいてるぞ ライターをみせられただけで火がつくぞ てなじょうだんをひとりごち 峠という名のつく 峠がない土地へきて べんとうをひらく はずかしや タンポポ ポピー ムラサキハナナ いろとりどりの花がこぼれそう にょうぼうのやつ と にょうぼうどころか 女ひでりが わざとらしく にがわらいして ほかに目があるでもないのに 花いっぱいのべんとうに たじろいでみせるのだ みるべきものもない関東平野の けしきがひろがり そこにべんとうがひとつ ぐいっといばって花ひらいている いいにおいだクン、クン、クン 花粉症のミツバチだったら ひとたまりもねえべ クン、クン、クンそれでなくても みるべきもののないけしきの 北の果てでは ゲージツがばくはつする季節 峠のないこの土地もゆれ しりのしたは粘土質の赤土が層をなし おれはその のりしろみたいなところに 腰をおろしているのだが しりまでねばついているわけではない