無名峠で 2/2


そんなところへ津波がやってきて
花いっぱいのべんとうをひっくりかえし
てめえ おれのおんなに
なんてこえがして
峠のない土地としりつつ峠をもとめ
もとめれば のりしろは海抜一〇〇メートル
この土地ならではのおもいきった高さ
親鸞になついていたサルみたいに
おれはするすると高みへのぼったさ
くるべきときがきたというべきか
おもわずねんぶつとなえれば
サルのにおいがしていたな
地獄の風か
おれは墨染めごろもの旗となってなびき
いたましや
タンポポ ポピー
ムラサキハナナ
ぷかぷか浮かぶ関東海峡
波にタクシー 屋根の緊急信号が
ピクピク ピクピク
それもたちまち沈んだが