パトリシアがいた夏 うすっぺらなはだかの胸に そらがすけて見えそうな うすっぺらなハムを二枚載せて パトリシアは泳いでいたね あの夏の六本木の谷の底 湧き水もある池をとりまいたぼくらは パトリシアがバックストロークで 水をひとかきするたび 息を呑んだものさ あのうすっぺらなハムが ずれてしまったらどうしよう * 夏休みの宿題なんか なんとかなるさ パトラがいるかぎり 逆あがりなんかできなくたって パトラがいれば ぼくらはハッピー 口にはしなかったけどだれもがそう思った * 名前を呼ぼうとすると それだけではらはらしちゃう そしてかげでは さも呼びなれているかのように装って パトシリアが、と話し始め パトラが、とつぶやく * 六本木にまだ草原があり 雑木が生え ボール投げではしょっちゅう やぶにボールを見失っていた時代 ぼくらのそばにパトリシアがいて パトリシアのそばには幸せがころがっていて ぼくらはだれでも自由にそれを拾うことができた *